- 2010-10-23 Sat 01:09:05
- 学ラン
いつもより教え方が熱心な気がする現社の授業中、
担当教諭がホワイトカラーとか言う単語を説明している。
「ホワイトカラーって言っても白い色って意味じゃないよ。このクラスに学ラン着てる子っていたっけ?」
急に周囲の視線が集まって来た。そう、俺はクラスで唯一学ランを着てる子だったのだ。
しかし教諭は目の前の俺に気付かなかったのか、
「やっぱり居ないかぁ…この学年どこにも居ないんだよねぇ…」
周囲の視線が最早凶器のレベルに達している。女子のクスクス笑いが聞こえて来る。だが、ここを切り抜ければ…!
俺は気配を消し顔を伏せ、全世界の神々に祈りを捧げた。
ああ、全知全能の神ゼウ─
「あ、居るじゃん!」
神々は俺の事が嫌いだったようだ。
「〇〇君ちょっと立ってくれる?」
密かに神々を呪いつつ、しかし名指しされたからには
無視する訳にも行かないので素直に立ち上がる。
「ほら、ここがカラーね。
後ろの人見える?この襟の部分」
視線が痛いってレベルじゃない。
誰か助けてくれ。
…そこの女子笑うなぁっ!
笑い声で寝てた奴まで
起きちゃったじゃないか!
「いやー、学ラン良いよねぇ。〇〇君出身中学何処なの?」
「えっ?ええと─」
恥ずかしさのあまり頭が上手く働かない。とっさの質問に中々返答出来ない。
「出身中学は─」
「言えないような所なの?」
それは一体どんな中学だ。だが、中学時代の事を色々聞かれるのは嫌だな。
「はい。言えません」
周囲のどよめきが大きくなった。俺は自らの失敗を悔いたが、時既に遅し。
「じゃ、もう座っていいよ」
そうして数々の犠牲(俺の精神に)を出して授業は再開されたのだった。
この物語はフィクションです